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Vol.093 2015.06.30

カナダの公文生の発明品

カナダから
フィリピンの友だちに
明かりの贈り物

夏休みの自由研究は何をしよう。カナダで公文を学習する女子高校生アン・マコシンスキーさんが、電池のいらない懐中電灯を発明したのはフィリピンの友だちのためでした。 グーグル科学フェア優勝作品の誕生秘話がヒントになるかもしれません。

目次

夜、勉強する明かりがない

アンさんが発明した「Hollow Flashlight」
夜、読書を楽しむアンさん

120を超える国から数千の若き科学者たちが応募した「2013年グーグル科学フェア」の15–16歳部門で第1位に輝いた「Hollow Flashlight」(空洞の懐中電灯)。カナダのビクトリア州の高校生アン・マコシンスキーさんが、手の平の熱だけで発光するこの懐中電灯を発明したのはフィリピンの友人の勉強を助けるためでした。

10年ほど前、アンさんは、お母さんの家族の暮らすフィリピンの小さな村を訪れました。貧しいながらも自分たちの生活に満足している村の人々。アンさんは村の子どもたちと通りで鬼ごっこやサッカーをしたりして打ち解け、その中の一人の女の子とは何年にも渡って連絡を取り合う仲となりました。

しかし数年前、アンさんはフィリピンのその友だちが進級できなかったという衝撃の事実を耳にします。彼女は、学校を終えて帰宅すると家事を手伝い、家族の世話をする日々。家事が一段落する夜間は、家に照明がないために勉強できなかったというのです。電気という基本的な生活必需品もないような国があることに気づかされたアンさんの奮闘はここから始まります。

試行錯誤の末

9歳で公文に入会したアンさん。たし算から始めた学習が因数分解まで進む頃には、実験の際に必要な膨大な量の計算も難なくこなせるようになっていました。やり始めたことは熟達するまで粘り強く取り組む力を身につけたアンさんは、2011年から今回の受賞まで以下のような実験を積み重ねました。

製作過程課題
振動を電気に変える仕組みを使った懐中電灯を製作*1光度は高いが、友人の住むような静かな村で使うには音が大きすぎる
太陽電池を使って実験天気が悪いときには使えない
温度差を利用して発電するペルチェ素子をろうそくで熱する装置を製作*2電気を得るためにろうそくを使い続けるのは現実的ではない
体温を活用してみようと思い立ち、アルミの筒にペルチェ素子を貼りつけ、手で握ってみる低い電圧ではLED電球は発光しないが、アドバイスをくれる専門家が近くにいない
インターネットを駆使して自前の電圧変換回路と変圧器を作り、手の平の熱だけで懐中電灯を光らせることに成功!*3 
 

*1

*2

*3
 

こうして2013年グーグルフェアの受賞作品、「Hollow Flashlight」が完成しました。

「誰か」ではなく「自分」が

世界銀行の報告によると、電気のない生活を送る人は全世界で12億人にのぼります。公文の学習を通して率先して行動する姿勢が身についたというアンさんは同年代の子どもたちに語りかけます。

「今、私たちのまわりは地球規模の問題について知る機会があふれています。課題を目にしたとき、他の誰かを待つのではなく、あなたが解決してみませんか。みんなで力を合わせていくことが必要なのです」。

受賞後のアンさん

今日も新たな発明に取り組んでいます
彼女は現在「Hollow Flashlight」の光度を上げるような改良に取り組み、特許を出願中。自分の懐中電灯が、それを必要としている国の人々に安価に提供できるよう、量産を希望する会社と交渉を重ねています。また直近では飲み物から電気エネルギーを取り出す「The e-Drink」を新たに発明し、半導体メーカーのインテルが主催する高校生向けの「2015インテル国際学生科学フェア」で入賞。アンさんのこうした絶え間ない創意工夫が実を結び、いつの日か電気のない生活を送る多くのご家庭のもとにも明かりが届けられるようになることでしょう。

 

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