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Vol.092 2023.01.27

丸紅インドネシア代表
笠井 信司さん

<後編>

経験に無駄は何ひとつとしてなく
将来に必ず生きる
Discipline”を身につけよう

丸紅インドネシア代表

笠井 信司 (かさい しんじ)

東京都出身。東京工業大学卒業後、1990年に丸紅入社。保険事業部長、ヘルスケア・メディカル事業部長、次世代事業開発本部副本部長などを歴任して2021年、丸紅インドネシア代表に就任。商社経験においてアメリカやシンガポール駐在のほか、中南米やロシアなどでもビジネスを経験する。

日本が誇る総合商社に30年以上勤続し、現在はインドネシア現地法人の代表としてご活躍されている笠井信司さん。公文式学習で身につけた「Discipline(ディシプリン)≒自律の鍛錬」が、商社でのタフなビジネスシーンでも非常に役立っているといいます。現在はインドネシアでKUMONと協働しながら、自らが大いに影響を受けたKUMONのフィロソフィーを同地で広げていきたいと意気込みます。現地におけるKUMONとの取り組みや、商社の魅力についてもうかがいました。

目次

日本発のコンテンツを世界に広げるお手伝いをしたい

笠井 信司さん
チリのアタカマ砂漠で丸紅が
大型チリ銅山への投資を決定。
保険手配のために現地出張した(42歳)。

インドネシアに来てみて、KUMONが思っていた以上にグローバルに展開していることに驚きました。ここまでとは思っていなかったというのが正直な感想です。それはやはり、KUMONの“Discipline(ディシプリン)”、つまり鍛錬の部分が、日本人だけでなく海外の人にも受け入れられる普遍的なものだからだと思うんです。

急成長を遂げているインドネシアですが、基礎学力や計算力、また自分で学習する習慣を身につけること、つまりディシプリンは、今後、非常に重要で必要とされる能力になると思います。インドネシアでの協働プロジェクトをきっかけに、KUMONという日本発の素晴らしいコンテンツ、フィロソフィーを世界に広げていくお手伝いができれば、公文式学習の経験者としてこれ以上うれしいことはないですね。

都内の私立中高一貫校を卒業後、大学は東京工業大学で経営工学を専攻しました。やはり、数字が好きだったんでしょうね。とはいえ理系に進んだものの、研究に没頭するよりは人と話すのが好きだったこと、海外への興味もあったことから、大学院には進学せず、総合商社に就職しました。

実は、私の社内キャリアは、商社の中ではちょっと変わっているんです。従来の総合商社は縦割りの事業モデルが中心で、入社後一貫して食糧をやる、化学品をやる、資源をやる、ということが多いのですが、私の場合、これまでの担当業務が多岐に渡っています。インドネシア赴任前は東京本社のヘルスケアメディカル事業を、その前はシンガポールで保険金融事業を担当していました。

物流や不動産も担当しましたし、最初の駐在地のアメリカ・マイアミでは中南米にコピー機を輸出していました。ですから、社内でも珍しく、ヘルスケアメディカル事業部と保険事業部というふたつの営業部長を経験しているんです。つまり、横に広くやってきたことが今、生きていると思っています。

無駄な仕事は何ひとつなく、財産になる

無駄な仕事は何ひとつとしてなく、財産になる

笠井 信司さん
マイアミ事業会社で社長(36歳)を
していた時のオフィスにて

例えば、マイアミ駐在時は毎週のように中南米に出張していたのですが、まったく異なる商売のやり方に苦労させられました。支払を回収できないことは割と頻繁にありましたし、支払を求めて逆に訴えられたこともありました。とにかく、日本の常識は通用しない。クリスマスの日に突然辞めると言い出したスタッフを説得するためにコロンビアまで飛んでいったことだってあります(笑)。

ただ、その苦労が、東京本社に戻って保険事業部長をしていた時に生きてきます。2008年に丸紅がチリの銅山に大きな投資を実行した時、その投資に関する保険手配のため、日本の保険会社向けに南米ツアーを組んだんです。

日本から銅山までは飛行機を3本乗り継ぎ、さらに陸路で3時間かかる。日本と比べると季節も時差も反対で、地理的にも心理的にも非常に遠いところです。そんなところへのツアーが実現したのはやはり、マイアミ時代の経験があったからこそ。この企画は大きな成果を挙げることができ、社長賞を受賞しました。自分でも非常にやりがいを感じた仕事のひとつです。

入社後まだ若かったころ、コピー機のビジネスで1年の3分の1ほどロシア・モスクワに出張していた経験は、後にヘルスケア事業でロシア鉄道と合弁でロシアに予防医療・診断センターを設立することにつながりました。そしてまた、メディカル・ヘルスケア事業でインドネシアの病院に投資をしていたことが、新型コロナウイルスのデルタ株大流行の混乱時に、正確な医療情報へのアクセスを可能にしてくれました。駐在員や従業員の命と生活を守れたことはもちろん、ビジネス面でのダメージも少なく済んだことは幸運でした。このように、これまでの全ての仕事がつながって生きているんです。

目の前の仕事をしながら、「こんな仕事して自分はどうなっちゃうんだろう……」とか、「希望の場所での仕事ではない」などと、将来を不安に思う瞬間は誰しもあると思います。ですが、長くやっていれば実はその経験が後に生きてくるということを、今、自分は強く実感しています。これまでやってきた仕事は何ひとつ無駄じゃなく、すべて財産になっているんです。

ですから、若い方にもぜひがんばっていただきたいですね。これもKUMONのディシプリンに通じるのではないでしょうか。我慢強く耐えていればきっといいことがあるということは、小学生時代のKUMONの経験からも、商社での仕事経験からも身を持って体感しています。こうした経験は、インドネシアの丸紅のアセットであるパルプ工場とKUMONを組み合わせて新しいビジネスを創ってみよう、といった柔軟な発想にもつながっていると自分では思っています。

人と人が直接会うことの大切さ

今の時代こそ、人と人が直接会って話をすることが重要

笠井 信司さん
チリ銅鉱山の現場にて大型建機と一緒に

「総合商社」というのは、じつは日本にしかないビジネスモデルで、その実態はなかなか分かりにくい面もあると思います。何をビジネスの中心にしているのか、一言で説明しにくい業種ではありますが、海外という広いフィールドでグローバルな視点を持って大きな仕事ができるというのが一番の魅力だと思います。

そして、新しいアイデアを持って事業を計画立案して、その事業を立ち上げ、広く展開していくことができる環境が、商社にはあります。新しいことをクリエイトして、さらにオーナーシップを持ってその事業を展開していけることも魅力だと思っています。

商社というのは、商い=トレーディングから出発したわけですけど、単に物を売ったり買ったりしているだけではありません。今は国内外の様々な事業に投資して、実際にお金と人を入れて事業を組み立てて運営していくというのが、現在の商社の仕事の醍醐味なんです。

私は商社に入社して30年以上になりますが、KUMONのように日本の良いものを海外に広げていくことが自分の使命だという気持ちを持ち続けています。逆に、海外の進んでいるものを日本企業に提案できるのも商社の重要な役割であり、自分自身もますます面白く、やりがいを感じているところです。

コロナ禍でオンライン化が進み、その利便性を享受してはいますが、特に新たな事業を創り上げたり生み出したりする時にはオンラインではダメだということも強く感じました。人と話すことが好きで商社に入ったわけですし、人と人が直接会って話をすることの重要性を痛感しています。ですから、現場に出向くことをこれまで以上に大切にしています。

もともと自ら動くことが好きで、今までもずっと実践してきたことでもあるのですが、トップの立場でインドネシアに赴任して以来、コロナ禍に負けず、スマトラ島の植林地・パルプ工場にもすでに何回も足を運びました。

ジャカルタから飛行機で1時間、そこから車で約4時間。舗装された道路もありますが、ガタガタの悪路がほとんどで大変な道のりです。しかし現場に行かないと、東京都の1.3倍の面積の植林地の広さや厳しさは見えてこない。自ら足を運ぶことで、若い人たちに実際の商売のやり方を見てもらいたいという思いもあります。トップのこうした姿勢は嫌がられるかもしれませんが、多少、評価してくれる人もいるかもしれません。これからもフットワーク軽く動いていきたいですね。

多様な文化や宗教が混在しているインドネシアは、多様性を認める国家です。女性の活躍も目覚ましい。ジャングルもあればバリ島のような観光地も、ボロブドゥールのような世界遺産もあり、見どころも豊富です。食事もおいしい。魅力的な国であると同時に、非常にやりがいのあるマーケットでもあります。

この国でできることはまだまだたくさんあると思っていますし、日本の良さ、もしくはインドネシアの良さをしっかり伝え、新しい事業モデルを創ることが私のミッションだと考えています。KUMONとの協働のような事業モデルをひとつでも多く立ち上げて、インドネシアと日本に貢献したいというのが、私の今の希望であり目標です。

前編を読む

関連リンク 丸紅株式会社


笠井 信司さん  

前編のインタビューから

-インドネシアで循環型ビジネスを構築
-KUMONと取り組むサステナブルな新規事業とは?
-公文式で身に付いたDisciplineは海外でも通用する

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