OB・OGインタビュー
Catch the Dream - 夢をかなえる力

2022/02/18更新

Vol.086

ライゾマティクス 主宰
真鍋 大度さん  前編

子ども時代の「好き」を大切に
専門家にはなれなくても
そこに近い未来が開ける

真鍋 大度 (まなべ だいと)

東京理科大学理学部数学科卒業後、大手電機メーカーにSEとして入社。1年間勤務したのち、友人が勤めるウェブコンテンツ制作会社へ転職するも半年で退社し、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)に入学、プログラミングを用いた表現を学ぶ。複数の仕事を経験後、2003年にアーティスト・ユニット「ライゾマティクス」を立ち上げ、2006年に株式会社化。2020年にアブストラクトエンジンに社名変更。研究開発要素の強い実験的なプロジェクトを中心に扱う部門を石橋素氏と率い、プログラミングとアート、アナログとデジタルを融合させた高度な技術力と表現力によって、五輪など世界的なイベントの演出やオペレーションを担う。

アーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマー、DJ…多彩な顔をもつ真鍋大度さん。Perfumeのライブの演出サポートなどエンターテインメントのほか、スポーツイベント、美術館、広告などさまざまなシーンで作品を提供、見る人たちに新鮮な驚きと感動を与えています。小学校入学前から数字好きだったという真鍋さんは、公文式教室に通ったことで得意な算数・数学をさらに伸ばし、プログラミング技術も獲得。それを武器に仕事も一直線に…と思いきや、途中で悶々とする時期もあるなど、さまざまな経験をされています。世界的に活躍されている真鍋さんの、現在に至るまでの道のりをたどりながら、お仕事のやりがいや新しいことを生み出す秘訣などについてうかがいました。

美術的な要素と理系的な要素を駆使し
未開の領域を作り出す

真鍋 大度さん

私が友人と主宰している「ライゾマティクス」はアートユニット名で、クリエイターとエンジニアの集団です。会社としてはアブストラクトエンジンという社名で、その中にある組織のひとつという位置づけです。

何をしているかというと、独自に開発したソフトウエアやハードウェアを用いて映像や音楽を作ったり、照明を制御したりして、ライブパフォーマンスの演出サポートや、スポーツ観戦をよりおもしろくするための演出などを手がけています。領域としてはエンターテインメントやスポーツのほか、美術館、広告など幅広く、国際的なイベント演出や都市開発の監修などアウトプットの場も広がってきています。

私たちはコンテンツ制作だけでなく、システムやツールなどの技術開発もしています。別の言い方をすれば、制作する美術的な要素と技術を開発する理系的な要素の両方を駆使して、これまで誰もやっていなかったようなものを作り上げていく。面白い職業だと感じています。

私の代表作としては、2008年と少し昔になりますが、音にあわせて顔の筋肉が動く「electric stimulus to face※」(低周波刺激装置)があります。自分の顔に医療用電極をつけ、音楽の信号を低周波の電気刺激に変換して、それに合わせて顔の表情をコントロールする実験的な作品です。YouTubeにアップしたら大きな反響があり、世界30都市以上で発表することになりました。
※electric stimulus to face https://www.youtube.com/watch?v=YxdlYFCp5Ic

医療用電極は医療分野で使われているもの、低周波刺激装置は知人に作ってももらい、ソフトは自分で開発しました。発表して14年ほど経っていますが、いまだにいろんなアーティストの方がこの動画を参照してくださっていて、私のマスターピースといえる作品です。

こうしたことができるのは、音楽を作るだけでなくソフトも自作することができるから。ソフトを自作できると、元々ないような楽器を作ったり、既製品のソフトではできないことができたりと、いろいろなことが自由にできます。

顔面を音楽で制御する作品は自分でやりたくて作ったものですが、依頼された仕事で印象に残っているのは、フェンシング選手が使う剣先の動きを可視化したプロジェクトです。フェンシングはものすごく早い動きをするスポーツで、剣先の動きは肉眼ではなかなか見えません。それが見えるようになったら、その動きから選手がどういうことを考えて試合をしているかわかり、よりおもしろくなると考えて提案しました。

2013年からプロジェクトとして始まり、国際試合で使えるようになったのは2019年。ちょうどAI技術が発達し、新しいアルゴリズムが開発され、物体検出の精度が急激に向上したことも幸いし、その新技術とライゾマティクスのエンジニアを中心に開発したアルゴリズムを組み合わせて完成することができました。現在国際特許を申請しているところです。

小さい頃から好きだった数学

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