もの心つく前から父と兄と昆虫を追いかけていた
![]() |
私が昆虫と関わりを持つようになったのは、0歳のとき父と兄が昆虫採集を始めたことがきっかけです。その結果、もの心がつく前から私も昆虫を追っていました。1歳6ヵ月のときにトンボを持っている写真があり、3歳でオニヤンマを捕まえたことは、鮮明に記憶に残っています。その頃、子ども向け昆虫図鑑を買ってもらい、見ているうちにいろんな昆虫の名前を覚え、昆虫の世界にのめり込んでいきました。
最初は、きれいだからという理由でチョウが好きでした。興味の中心がトンボになったのは小2のとき、私が住んでいた富山県では珍しい「ミヤマサナエ」というトンボを自宅近くで見つけたことがきっかけです。このトンボは、富山県ではそれまで偶然見つかった記録があるだけで、どこで発生しているのか分かっていなかったのですが、私たちが見つけたのは、幼虫から成虫に羽化して飛び立ったところ。つまり、初めて富山県内で生息地がわかったのです。
博物館に持ち込んで学芸員の方に標本を確認してもらい、そのときに「富山県のトンボ相」という目録をいただきました。この本には、富山県で当時記録されていた76種のトンボがいつどこで見つかったのかが書かれており、この目録をきっかけにトンボへの興味が膨らみました。ちなみに、「同じようなチョウの目録はありませんか?」と聞いてみたのですが、当時は存在せず、それによって興味の中心がチョウからトンボへと変わったのです。
目録には、76種のトンボのうち、富山県内で生息状況が不明なトンボが15種もいることや、県内では見つかっていない種が今後発見される可能性があることが書かれていました。漢字ばかりの本でしたが、辞書を引きながら解読し、地図を見ながら、これらのトンボのいそうな場所を自分なりに絞り込んでは、父と一緒に探すことに明け暮れました。実際に狙いのトンボが見つかったときは、博物館に持ち込んで学芸員の方に確認してもらうんです。珍しい種を見せた時の学芸員さんの驚く顔を見るのが、なんとも嬉しかったものです。そうして学芸員さんとも顔なじみになっていきました。生息状況の不明なトンボは1種を除いて再発見に成功し、富山県初記録の種を複数発見することができて、今では富山県のトンボは89種に増えました。お金では得られないよろこびと感動を何度も味わうことができました。
中1のときにはトンボについて書いた作文が全国賞を受賞し、副賞としてフランスのファーブルの生家見学という得がたい体験もしました。私の場合は、そもそも海外が初めてだったので、「フランスはどんなところだろう」「この時期フランスにはどんな虫がいるかな」という興味で頭がいっぱいでした。