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プレスリリース

2010年度「子ども浮世絵」活用にみる現代

2011年7月4日 (月)

子ども浮世絵

公文教育研究会(代表取締役社長 角田秋生〔つのだ あきお〕)では、江戸子ども文化研究のために、子どもが描かれた浮世絵(子ども浮世絵)をはじめ、遊具や文具、版本など子どもを軸にした歴史的な資料を3000点ほど所蔵しています。そうした作品は、現物を貸し出して展覧会に出展したり、または書籍やテレビなど様々なメディアで絵画史料として、活用されています。
2010年度の江戸子ども文化作品の、活用例を紹介しながら、そこから垣間見える、現代の潮流の一部をお伝えします。

海外において日本を紹介する場での活用
~その文化的背景を浮世絵史料で探る~ “クールジャパン”の伝統

●2010年夏 モナコ グリマルディー・フォーラムにて日本展開催
モナコの公営文化施設 グリマルディー・フォーラムにおいて「京都―東京 侍からマンガまで」という日本の歴史、文化を海外に向けて紹介する大規模な日本展が開催されました。国内外から集められた仏像、掛軸、鎧兜、浮世絵といった伝統的な文化財美術品からマンガやアニメ、フィギュアなど現代の日本のポップカルチャーまでを百花繚乱的に集めた展覧会。KUMONからは現代のマンガのルーツとして絵巻や奈良絵本、浮世絵など66点を出展、好評を得ました。KUMONの展示コーナーの続きには先日フランスの芸術文化勲章 シュヴァリエの叙勲が発表された漫画家谷口ジロー氏の作品も展示されました。

●2010年12月香港開催「感性価値デザイン展」での活用
経済産業省とJICAが主催のイベントで、日本の新しいものづくりを世界に向けて発信する当展示会。展覧会のキーワードは「日本人の感性」。こうした「感性」を体現する優れたデザインのプロダクツ(exタタメット・INFOBAR・地下足袋・アシモ)を紹介するとともに、それらを受け入れ暮らしを楽しむ「日本人の感性」そのものも伝えるという展覧会でした。暮らしの中にある日本人特有の感性を感覚的に伝えるために、手法としてマルチイメージ映像が製作され、会場で放映されました。その中で、わびさびではない日本人独特のにぎわいの文化を表現するイメージ映像として、KUMONの子ども浮世絵が20数点活用されました。江戸の風俗を伝える伝統的な浮世絵等絵画と現代の日本の様相、ポップカルチャーなどが交錯するこの映像。寺子屋の浮世絵と現在の公文式教室の画像も並べて表現されることで、過去から確実につながっている現代の日本が伝わってきました。

寺子屋画像「感性価値デザイン展」
寺子屋画像「感性価値デザイン展」

「クールジャパン」、とよばれ、海外でも独特の存在感をもち、日本ブランドがグローバルに価値づけられる昨今、優れたデザイン力、技術力、文化を世界に発信する日本を紹介する際に、その背景として日本古来の伝統や歴史をルーツとしてビジュアルに紹介する、そのような流れがみてとれます。

現代のお母さん方が注目 「アロマザリング」・「共視」 という考え方

●アロマザリングとは“母親以外のパパや祖父母、ご近所など、周囲を巻き込んだ子育て”
アロマザリングとは、先進国で近年、唱えられ支持されてきている子育ての概念です。でも実は江戸時代の子育ては、このアロマザリングが普通に行われていました。子育ては母親というより、父親がその第一義の責任を持ちました。また親以外にも子どもには、名づけ親、乳親のような仮親、地域の大人など様々な大人が多様な機会に縁をもち、多くの大人に見守られ、育てられて成長したのです。こうした江戸時代の子育ての様子は、2010年発刊の香山リカ氏の『母はなぜ生きづらいのか』(講談社現代新書)、太田素子氏の『近世の「家」と家族』(角川学芸出版)の中で、KUMONの子ども浮世絵も史料として使われながら、紹介されてきました。2011年2月号の『AERA with Baby』でこの「アロマザリング」と江戸の子育ての紹介をされたところ、若い子育て中のお母さん方から様々な反響があったそうです。古いものとして切り捨てられてきた様々な子育ての知恵が、新しいこととして今、注目をされつつあります。

幼童遊戯早学問 手紙用文はんじ物 芳員 文久
幼童遊戯早学問 手紙用文はんじ物 芳員 文久

●北山修氏による浮世絵母子絵の研究成果の発表 ~浮世絵母子絵にみる共視~
九州大学名誉教授で精神科医の北山修氏は、江戸時代の母子の関係を、浮世絵母子像の分析から「共視」※理論にまとめ、西洋とは違う日本人の子育て論、母子関係論にまでつなげる研究をされてきました。その講義が2010年秋に「きたやまおさむのアカデミックシアター」というタイトルのもと、一般に向け公開されました。学術的な共視理論を一般の人も楽しみながら劇場で講義を受講するという新しいスタイル。KUMONの浮世絵(母子絵)を巨大スクリーンに投影しながらの講義内容は、テレビ東京「きたやまおさむ アカデミックシアター ~あの素晴らしい愛について」という番組でも紹介。江戸時代の母子の関係を横並びの関係、と分析するとともに、日本人の心性にせまる公開講座は斬新かつ、人と人との絆の大切さを改めて今の世に訴える講義でした。

※共視とは…同じ対象を共に眺めているように見える母子像

「春交加鳥をひ」国貞 文政頃
「春交加鳥をひ」国貞 文政頃

少子高齢化が進み、その対策が模索される今の日本。そこには核家族化し、地域の中で孤立しながら子育てをする現代の若いお母さんたちの苦悩が垣間見られます。
地域や家族の絆を大切にしながら社会全体で子育てをしていた江戸時代。こうした江戸時代の子育てが今改めて、注目を集めています。
現代の問題に対し、他国のモデルに倣うのではなく、歴史を遡って自分たちの中にその解決策をみつけようとするアプローチや、現代の日本の強みを、伝統的な日本文化から語ろうとする動きが、今確実に増えているようです。

●最後に大正の関東大震災を題材にした記録版画をご紹介します。

「我家の焼跡」白帆 大正
「我家の焼跡」白帆 大正

「火に追われ水に溺る」白帆 大正
「火に追われ水に溺る」白帆 大正

今から約90年ほど前。関東大震災が東京を襲いました。その震災にあたり、画家たちも自らの体験に心象を織り込んで、多くの作品を描き、木版画にもなりました。そうした絵画は、写真とはまた違う形、記録版画として、過去から今の私たちに様々なメッセージを送ってくれているようです。母子の姿を描いたものも多く、母子の絆や、人と人の絆の大切さ、震災被害の悲惨さが時代をこえて、伝わってきます。

 プレスリリースに関するお問い合わせ先
 公文教育研究会 TEL 03-3234-4401

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