「夢」「学び」を支えるKUMONの「いま」を伝えます

記事検索
Vol.179 2016.10.25

就労支援としてのKUMON-
でらいとわーく(前編)

自分の持っているに気づき、可能性を知る。
自分にとっての“ちょうどいい”を知り、
働き続ける喜び、幸せを感じる」
その実現のためのサポートをしたい。

障害のある方たちが、就労を目指しさまざまな能力やスキルを育てる場、学ぶ場。それが「就労移行支援事業所(*)」です。東京都大田区にある就労移行支援事業所“でらいとわーく”には、毎日20人ほどの利用者様方が集い、笑顔と活気あふれる学びの場になっています。公文式を就労支援トレーニングの一環として導入してからの事業所の様子を、2回にわたってレポートします。今回は、就労移行支援事業にかけるスタッフの皆様の想いをお伝えします。

目次

*「就労移行支援事業所」
就労移行支援事業所は、障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスのひとつである「就労移行支援」のサービスを提供します。障害のある方を対象に、仕事をするうえでの必要な能力やスキルを身につけるためのさまざまな職業訓練プログラムを用意するほか、就職活動全般をサポートします。また、「就労移行支援」は比較的新しいサービスです。2006年の障害者自立支援法(2012年改正、2013年に障害者総合支援法)の施行に伴い、それまでの「授産施設」「小規模作業所」(通常の就労がむずかしい障害者のための働く場)のほとんどは、就労そのものの場を提供する「就労継続支援A型(雇用契約あり)」「同B型(雇用契約なし)」、そして就労に必要な能力やスキルの向上を図るための「就労移行支援」などの施設や事業所へと順次移行してきています。

「就職はゴールではなく、働き続けることが大切。だからこそ、利用者様に寄りそっての定着支援が非常に大切だと考えています」

東京都大田区蒲田。JR、東京急行、京浜急行などの鉄道が乗り入れ、羽田空港も近く、交通至便。東京の都心以外では有数の繁華街であり商業地区です。

今回ご紹介する就労移行支援事業所”でらいとわーく”は、JR蒲田駅から徒歩5~6分ほどのビルの4階にあります。周りにはたくさんのお店や商業施設があり、オフィスビルも立ち並ぶ地域。週1回のスーツデイではスーツを着て、でらいとわーくがあるビルに入っていく利用者のみなさんは、ふつうに出社する社員さんのように見えます。

就労支援としてのKUMON-でらいとわーく
でらいとわーくには、服装の違いで、「スーツデイ」と「カジュアルデイ」があり、こちらは「カジュアルデイ」の日の様子

毎週月曜から金曜の5日間、利用者様方は、午前は元気な声が室内にあふれるミーティング(朝礼)からスタートし、2時間の就労支援のトレーニング(国語・数学・英語3教科の公文式学習)に取り組み、午後はパソコンやビジネススキルアップなどをはじめ、仕事をするうえで役立つ豊富なプログラム(月毎・曜日毎により多種を用意)を実践します。

まず、就労移行支援事業所が担うものや役割といったことを、でらいとわーくの西浜さん(副施設長)にうかがってみました。

「わたしたちの役割は文字通り、障害のある利用者様方が仕事に就けるように、多種多様な支援プログラムを用意し、能力やスキルを養っていただき、就労に結びつけることです。もちろん、履歴書の書き方の指導や模擬面接から、ハローワークでの求職活動や職場実習などのサポートもしています。

では、仕事に就けさえすればよいかというと、そうではないと思います。就職はゴールではなく、新しい人生のスタートだからです。その意味では、就いた仕事をやりがいをもって続けられるための定着支援も、同じくらい大切にしています。

その第一歩が、わたしたちがよく口にする“利用者様と仕事とのマッチング”です。簡潔に言えば、その方がもっている能力や志しているもの、たとえば、得意なことは何か?どんな能力が高いのか?やりたい仕事は何か?といったことを、利用者様とともに考え、支援プログラムを通して見つけ、その方にぴったり合った仕事や職場をいっしょに探す…ということになるでしょうか。もちろん、このマッチングには、企業様側が求めている人材という要素も含まれます」

ちなみに、でらいとわーくを利用される方の多くは、精神障害(統合失調症やうつ病など)や高次脳機能障害(脳外傷や脳血管系の病気などによる認知面を主とした脳の高次な機能の障害や機能不全)とのこと。「就労移行支援事業所」といっても、その事業所により利用される方たちの障害もさまざまです。

スタッフのみなさんが「こんな人になってほしい」と想う共通のイメージとは?

「 職場の人たちから“この人のために何かしてあげなくちゃ”と思っていただけるような、可愛らしさのある人になって、ここを巣立っていってほしいです」

就労支援としてのKUMON-でらいとわーく
西浜さん(副施設長)

でらいとわーくが公文式学習を導入したのは2015年3月から。その理由について、西浜さんはこう話してくださいます。

「さきほど、就労に必要な能力やスキルを養う…と話しましたが、障害のある方対象に以前から作業所や授産施設でしていたような単純作業的な訓練では、仕事に必要な能力やスキルを養うという前に、その方がどんな能力を秘めているのか、何が得意なのかなどは、なかなかわからないのかなと思います。

公文式のように、いまもっている能力にちょうど合った内容の教材をする、それも100点に仕上げながら学ぶことで、“自分はこれだけできるんだ”、“こんなに可能性があるんだ”と自信や自己肯定感がもてます。そのプロセスで学力はもちろん、新しいものを学ぶ意欲も生まれてきますし、そういう状態になるからこそ、その方の能力や良い面が見えてくるのだと思います。そこに魅かれ、当時のうちの代表が公文の導入を決めたのですが、わたしもまったく同じ想いです」

ところで、でらいとわーくのスタッフのみなさんには利用者様方に「可愛らしさのある人になって、ここを巣立っていってほしい」という共通の想いがあるそうですが、具体的にはどんなことなのでしょうか。就労支援員の佐藤さんにうかがってみました。

就労支援としてのKUMON-でらいとわーく
佐藤さん(就労支援員)

「働きやすい職場というのはすでにあるのではなく、そこに集まる人たちが創っていくものなのだろうと思います。それには障害のあるなしは関係ないですよね。ですから、わたしたちスタッフは、利用者様方が就職してから、その職場の人たちから“この人、いま困っているみたいだから何とかしてあげよう”と思っていただけるような、可愛らしさのある人になって巣立っていってほしいと心から思っています。そういう人が一人でもいると、職場って空気が変わりますから。明るくなりますよね」

このお話を受け、職業指導員の藤崎さんがこう続けます。

「可愛らしさのある人、具体的にどんな人なのかをわたしなり言えば、“一所懸命に仕事に取り組む”、“向上心や意欲がある”、“アドバイスや注意を素直に聞ける”といったことがそなわっている人だと思います。そして、そのどれもが公文の学習で培っていけると、最近強く実感できるようになりました。日々の教材に真剣に取り組む、先の教材へ進むためにがんばる、ミスの訂正や教材進度の調整などでわたしたちスタッフの話をきちんと聴く。こういう毎日の積み重ねがあるからこそですね」

仕事に就いたあと、職場で働く利用者さんをイメージし「可愛らしさのある人」になってほしいというスタッフ全員の想い。この想いが、でらいとわーくの温かな雰囲気を醸しだしている、利用者のみなさんの笑顔につながっているのだとわかりました。聞けば、スタッフのほとんどは、一般企業、大手企業での仕事の経験がおありとのことで、そこでの人間関係や働きやすさなどを考えたうえでの、「可愛らしさ」を願う気持ちが深く伝わってきました。


関連リンク 就労移行支援事業所 でらいとわーく(一般社団法人障がい者・高齢者じりつ支援機構)

就労支援としてのKUMON-でらいとわーく 社会的自立をめざす方々に学ぶ喜び、成長する喜びを。
就労支援施設
導入目的は施設によって異なりますが、学力の向上と、態度面や生活面の変化は共通です。
詳細をみる

    この記事を知人に薦める可能性は、
    どれくらいありますか?

    12345678910

    点数

    【任意】

    その点数の理由を教えていただけませんか?


    このアンケートは匿名で行われます。このアンケートにより個人情報を取得することはありません。

    関連記事

    バックナンバー

    © 2001 Kumon Institute of Education Co., Ltd. All Rights Reserved.