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Vol.170 2016.08.25

第4回グローバル・コミュニケーション
&テスティング主催セミナー

「英語教育改革を考える」
~その受験勉強
 世界につながりますか?~

TOEFL iBT®の若年層向けテストであるTOEFL Junior®、TOEFL Primary®を日本で普及しているグローバル・コミュニケーション&テスティング(GC&T)は、2013年から毎年夏に英語の教員や塾講師など教育関係者向けのセミナーを開催しています。「英語教育改革を考える」をテーマに全国7カ所で行われる今年のセミナー。内容は、午前中が識者2名によるセミナー、午後はグループワークを含めたワークショップです。今回は、金沢会場の様子をレポートします。

目次

「ネイティブ・イングリッシュ」から「ベーシック・イングリッシュ」の時代へ

グローバル・コミュニケーション&テスティング主催セミナー 帯野 久美子氏
帯野 久美子 氏

はじめに、翻訳や通訳の専門会社「インターアクト・ジャパン」の代表取締役であり、和歌山大学の理事・副学長、大阪市教育委員なども歴任し、中央教育審議会の委員も務められている帯野(おびの)久美子氏より、産業界から求められる英語や、英語教育の最新事情ついてお話しいただきました。

帯野氏は、アメリカの行政文書や企業内文書で現在求められている英語は、「ネイティブ・イングリッシュ」ではなく、中等教育終了程度の方が初見で読んで理解できるレベルの「ベーシック・イングリッシュ」に変化しつつあるとし、オバマ大統領による広島訪問時の演説や、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんのスピーチのような英語を例としてあげられました。その上で、まずはこの「ベーシック・イングリッシュ」を義務教育段階で身につけられるようにすることが望ましい、と中学校までの英語教育の大切さを聴講者に力説されました。

これからの大学入試問題のあり方

これからの大学入試問題のあり方

グローバル・コミュニケーション&テスティング主催セミナー
竹内 理 先生

続いて、関西大学外国学部学部長の竹内理(おさむ)先生に、テスト研究の観点からこれからの大学入試問題のあり方についてお話しいただきました。竹内先生は、応用言語学、第二言語習得論などがご専門です。

「英語力を測る」と一口に言っても、英語の「知識」や「技能」だけでも発音、文法、語彙、会話、作文などさまざまな観点があり、それぞれ測りたい能力を正確に測ることができるテストを大学内で作ることがいかに難しいかを指摘。

さらに、これからの大学入試における英語テストのあるべき姿として、英語の「知識」や「技能」のみならず、英語で「思考」「判断」「表現」する力を測定できることが望ましいと解説くださいました。

例として、文脈の中で知識を正しく使えるかを測る問題や文脈から語彙を推測させる問題、写真を基に会話を創作する問題など、さまざまな大学入試における実際の問題を提示しながら、大学入試も試行錯誤が続いていることをご紹介いただきました。

その上で、現在の日本の多くの高校生、大学生の英語力が、残念ながらCEFRのA1~B1レベルと低いことを踏まえると、そのレベルを測ることができるテストとしてTOEFL Junior®などが適していると紹介くださいました。その一方、国が進める大学入試における4技能外部検定試験の活用には、受験機会の保証やセキュリティの確保、学習指導要領との整合性といった問題点も残っているので、これらを一つひとつクリアしていくことが大切である」と結ばれました。課題はあるものの、変革が確実に進んでいることが実感できるお話でした。

英語4技能に対応した語彙指導とは?

英語4技能に対応した語彙指導とは?

グローバル・コミュニケーション&テスティング主催セミナー 萓 忠義 先生
萓 忠義 先生

午後の部は、学習院女子大学准教授で応用言語学博士の萓(かや)忠義先生によるワークショップ。4つのグループに分かれた参加者に、萓先生から話の流れに沿ってグループワーク課題が出され、発表と解説をくり返す双方向のやりとりでワークショップが進められました。

萓先生は、「小学校5,6年生から英語が教科化され、中学、高校と学習内容が高度化していくと、高校卒業までには英語を使って発表、討論、交渉などを行うことができる力が求められるようになる。そのような状況になった時、スピーキングやライティングに対応した語彙知識が必要になり、これまでのように単語の意味とスペルを単語帳で機械的に覚えるといったような学習では、たとえ簡単な単語であっても使うことができない」とし、英語学習における語彙の指導の重要性に注目されています。

グローバル・コミュニケーション&テスティング主催セミナー ワークショップの様子
ワークショップの様子

例えば、same という単語は通例the が伴い the same として表現される、consult(相談する)という他動詞は、専門家への相談や専門的な情報が載っている辞書などを調べる際に使う動詞で、専門知識がない人や物に対して使わない(自動詞 consult with の場合はOK)、などという例を紹介。

4技能に対応した語彙力養成のためには、「意味が分かる」から「実際に使える」状態にすること、つまり、理解語彙(リーディングやリスニングで必要な語彙)だけではなく、発表語彙(スピーキングやライティングで必要な語彙)も習得しなければいけないと説明されました。

また、萓先生は「これまで文法の学び方について解説した文献は数多く出ているが、語彙の学び方は十分に議論されていないのが日本の現状」と指摘された上で、いくつかの具体的な学習法を学術的根拠に基づき説明されました。

1つの単語を習得するには十分な時間を費やして向き合うべきこと、一度にすべてを学習するのではなく、段階的に学習を進めること、定期的に繰り返して記憶を定着させること、1つの単語に15回以上接すると記憶に残りやすいことなど、具体的な学習方法も多数ご紹介くださいました。

◆セミナー参加者の声

すべてのプログラムを終えて、参加者からは、「ベーシック・イングリッシュをまずしっかりというお話、大変共感しました」「大学入試に外部試験が導入されつつある理由や課題が理解できました」「午前中に学んだベーシック・イングリッシュが身についていることがベースとなって、午後の学びの段階が学ぶことができ、有益でした」「語彙の教え方については深く考えたことがなかったので勉強になりました」「生徒たちだけでなく、自分自身の学習にも使っていきたい」といった前向きな感想が多く聞かれるなど、充実した内容のセミナーとなりました。


関連リンク TOEFL Primary® |KUMON now! GC&Tウェブサイト(TOEFL Junior®日本公式ホームページ)

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