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Vol.142 2016.03.15

認知症高齢者が自分らしさを取り戻すために~学習療法とは(2)~

認知症高齢者を支える周りの方々にも
「希望の光」

認知症を発症した自分の親を介護施設に入所させることに対して葛藤を抱えるご家族、日々介護ケアに追われる介護施設の職員の方々……。認知症を取り巻く課題の一つに認知症高齢者ご本人だけでなく、周りで支える方々に大きな負担を生じさせてしまうことが挙げられます。今回は、「学習療法」が認知症高齢者の脳機能の維持・改善だけでなく、周囲の方々にとっても様々な効果をもたらしていることをご紹介します。

目次

認知症の維持・改善だけではない「学習療法」の効果学習療法を実践いただいている介護施設の方を通じて、次のようなお話をうかがうことがありました。


ご家族への効果

認知症高齢者の親を自分で介護するのは容易ではありません。結果として親を施設に託す決断をした後も、“自分で面倒を見切れなかった”、“自分を育ててくれた親に申し訳ない”といった複雑な思いを抱え、精神的に負担を感じられる方が多いようです。

そのようなご家族にとって、学習療法によって自分の親が「親としての自分」を取り戻し、家族を思い出し、普通に接することができるようになることは、大きな喜びとなります。親の変化を目のあたりにすることで、施設に託す際に抱いた複雑な思いが払拭され、「施設に入れてよかった」と感じるようになり、ご家族の気持ちの負担が大きく軽減されることも多いようです。


介護スタッフへの効果(入所施設の場合)
学習療法を導入した施設責任者から、「介護スタッフのモチベーションが上がった」という話をうかがうことが多くあります。

公文学習療法

入所施設の仕事は、三大介護(食事・排泄・入浴)が占める割合が多く、多忙です。また利用される方は高齢者であるため、施設を退所される時は入院されるか、残念ながらお亡くなりになる時がほとんど。そのため介護スタッフのモチベーションが下がり、結果的に離職される方も数多くいるのが実情です。

しかし、学習療法をきっかけに、認知症高齢者の要介護度が改善された事例が出てくると、介護スタッフは仕事の中で喜びを感じるようになるといいます。1日30分、学習療法を通じて施設の利用者と接することで、その方の人生や人柄が垣間見え、「この方にもっと元気になってほしい」という気持ちが芽生えてくるそうです。

学習をされていた方がお亡くなりになることがあるのですが、介護スタッフいわく、「亡くなり方が全く違う」と。認知症が進むと、ご本人に自覚がないまま亡くなられてしまうことが多いそうです。しかし、学習療法をされた方はご自分を取り戻し、「人間としての尊厳」を保ったまま亡くなられる、と言うのです。

そのような時は、ご家族からもたいへん感謝されるといいます。以前なら「最期を看取っていただき、ありがとうございました」と言葉をかけられることが多かったのが、学習療法でご自分を取り戻した方の場合には、「最期を幸せな状態で迎えられたのはあなたのおかげです」といった感謝の言葉に変わるそうです。

このように、学習療法を導入している施設では、介護スタッフが学習療法を通じて自分の介護が役に立ったという実感を持ち、ご家族にも感謝をされるという好循環が生まれているようです。

公文学習療法

施設にとっての効果
モチベーションが上がった介護スタッフによって施設全体のケアの質が向上することは、地域で施設の評判が広がっていくことにつながります。その結果、入所希望が増えたケースもあり、学習療法を導入したことが結果として施設運営面にも良い影響を及ぼした、と語ってくださる施設責任者の方も年々増えています。

学習療法の開発当初は、認知症の方の脳機能面での効果に注目が集まっていましたが、今ではこれらの事例のように、周囲に与える効果が数多く報告されるようになっています。


認知症問題に立ち向かうための新たなチャレンジとは?

新しい社会的投資モデル(SIB)への期待

公文学習療法

しばらく前までは、“治ることはおろか、改善することもない”と考えられていた認知症も、学習療法を行うことで脳機能が維持・改善され、周辺症状も改善するケースが出てきました。しかし現在の保険制度は、要介護の状態は徐々に悪化していくことを前提に設計されているため、要介護度が改善すると、逆に介護施設が受ける報酬が減ってしまうというジレンマがあるのです。

現在国では、このような状況を打開するための一つの方法として、イギリスで生まれた新しい官民連携の社会的投資モデルである、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)*の導入を模索しています。2015年から、この新しい仕組みを日本に導入するための国の調査事業が始まりましたが、学習療法は、介護予防分野のモデルケースとして選ばれました。SIBの仕組みを活用して良いサービスを実施することで、国家財政や認知症高齢者を取り巻く方々に、どのような経済的影響を与えることができるか、調査を行っています。
*ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)については、記事末尾の関連リンクをご参照ください。

近い将来、学習療法が認知症問題にとっての「希望の光」の役割を担うことができるよう、今後も活動を続けていきます。

関連リンク

認知症高齢者が自分らしさを取り戻すために~学習療法とは(1)~|KUMON now! 学習療法-ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)を導入した調査事業|KUMON now! 学習療法センター

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