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Vol.047 2018.03.30

英語教育学者 町田 智久先生

<後編>

英語は新しい文化
教えてくれる「扉」
楽しみながら学んでいこう

英語教育学者

町田 智久 (まちだ ともひさ)

東京都生まれ。信州大学教育学部を卒業し、羽村市立羽村第三中学校を皮切りに、12年間、東京都の中学校英語教師として複数の中学校に勤務。教鞭を執りながら東京学芸大学大学院にて修士号取得。その後、東京都教職員研修センターで1年間教員研修に携わった後、台東区立の中学校へ。1年4ヵ月の勤務後、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校大学院へ留学し、博士号取得。2011年4月に帰国して国際教養大学国際教養学部の講師に。2015年4月より同校グローバル・コミュニケーション実践研究科(大学院)英語教育実践領域の准教授。

2020年に小学校で英語が教科化されることを受け、英語教育への関心が高まってきていると同時に、教員の指導力にも期待と不安が寄せられています。そうしたなか、教育委員会をはじめ秋田県内の各自治体と協働し、TOEFL Primary®を活用した小中学校の英語教育や授業法の研究を進めているのが、国際教養大学の町田智久先生です。いま子どもたちにはどのような英語力が求められていて、今後日本人の英語はどう変わるのか ――中学校の英語教師としても実績を積まれた町田先生に、この研究に進まれた背景も含め、うかがいました。

目次

教師になるつもりはなかったが
教育実習で子どもたちにかかわる楽しさを知る

英語教育学者 町田 智久先生

私はもともと中学校の英語教師でしたが、小さい頃は教員になる気はまったくありませんでした。実家は米軍横田基地のそばで、米軍向けのホテルを経営し、また祖父がアメリカに留学経験があったため、アメリカには憧れを抱いていました。学校以外で英語を習っていたことはありませんが、中学時代は家に帰るとずっと米軍関係者向けのラジオFEN(現在のAFN)を聴いていました。そのうち突然、ラジオの英語が理解できるようになったりしました。高校は進学校とされる都立高校に進みましたが、部活のテニスとラジオの日々。勉強に熱心ではありませんでしたね(苦笑)。

ところがある時、アメリカから交換留学生が来て私がそのお世話係になりました。日本語がまったく話せない彼に日本文化を教えたりアメリカのことを聞いたりして一年間過ごすうち、あらためて英語はおもしろいと実感しました。

その後、信州大学教育学部へ進学しました。浪人したこともあり、学部はどこでもよかったんです。教師になる気もなかったのですが、学費を出す条件として、父に教育学部に入ったので教員採用試験を受けることを約束させられました。ただ、私は教員採用試験に受かっても就職は一般企業に、と最初は思っていました。

それが大学3年生の時、大学附属の小中学校で6週間の教育実習をしたら、とてもおもしろくて。指導教官も素晴らしい先生で、中学の英語教員になることに決めました。実習を通じて、未来のある子どもたちにかかわる楽しさとやりがいを感じたのです。

一方で、小さい頃からの夢だった留学もあきらめられず、教員になった直後もその思いは持ち続けていました。ところが中学校に勤め始めたらとても忙しくてそれどころではありません。授業をしていると、今まで自分が得た知識が脳みそから吸い取られていくような気がして、「自分も勉強しなくては」と、夜間に大学院に行くことにしました。

バレーボール部の顧問もしていたので、部活終了後にダッシュして通っていました。修士論文を書いた年は中学3年生の担任をしていました。「俺も勉強するから君たちも頑張れ」なんて励ましました。そして大学院を修了した時、勤務先の校長先生がフルブライト留学を勧めてくれたのです。

「外国語不安」をテーマにするきっかけとは?

心がけているのは
相手が理解できるように伝えること

英語教育学者 町田 智久先生
イリノイ大学の博士課程の卒業式

じつは私は大学時代、留学のチャンスがあったのですが、卒業の時期などの関係であきらめたことがあり、今回こそはと、アメリカに6週間留学しました。教員のためのプログラムで、世界中から集まった教員と学ぶことができました。そして、あらためて「教育はおもしろい」と感じ、指導方法などを本気になって勉強しました。

帰国後、再び中学校勤務を1校経て教育委員会に移り、教員の研修を担当する部署に配属されました。中学・高校の英語の先生を集めてネイティブスピーカーによる英語研修を実施したところ、ある年配の先生が「自分には英語のコミュニケーションは必要ない」と言いました。もしかしたらネイティブスピーカーと会話する時、後輩教員に「あの先生は英語をしゃべれない」と思われるのが恥ずかしいのでは?と推測しました。その「自信のなさ」を取り除くことができたら、みんなもっと英語を話すのでは ――そしてそれをテーマに研究したいと考えました。

そして研究を深めるために、教員を辞めてアメリカに留学することを決めました。留学先は、教育学で有名な米国中西部のイリノイ大学大学院です。修士課程で英語教授法を2年間、博士課程では初等教育における外国語教育を3年間学んで博士号を取得した後に帰国、国際教養大学の講師となり、現在は大学院の准教授をしています。

国際教養大学は秋田県内の各自治体と教育提携をしているため、日頃から地元の小学生が大学に来たり、本学の教員が小・中・高校に派遣されたりと交流があります。私も学部生や院生に英語教授法などを教えるほか、各教育委員会と協力して研究を続けています。TOEFL Primary®の学校現場への導入は、私が自治体に声をかけて実現しました。

自治体と一緒に仕事をするうちに頼まれて研修や講演など人前で話すことが多くなってきていますが、その際にはオーディエンス、つまり聞き手を意識して書いたり話したりして、対応することを心がけています。相手にわかってもらってこそ価値があると思っているので、相手が「こういう言い方だったらわかるかな」ということを大切にしています。

もうひとつは知らないことは「知らない」ということです。学生から答えられない質問をされたときも、”That’s a good question. But I don’t have the answer now.”と言って、次回の授業までに調べる約束をしています。

町田先生が考える日本の英語教育のあるべき姿

秋田から日本の英語教育を変えていきたい

英語教育学者 町田 智久先生

私は教員になる時に「日本の英語教育を変えたい」と思って教員になりました。ですから、これからも小学校を中心に日本の英語教育をより良い方向にしていきたいと考えています。ネイティブのように話せるのが理想の教師なのではなく、誰でも英語を使えるのだという基盤をつくっていきたいです。それをこの秋田でやりたいですね。地方で実践するということに意味があると思っています。

子どもたちには、まず夢を持ってほしいです。そしてそれに向かって努力を続けてほしいと思います。私が「留学したい」という夢を最初に持ったのは子どもの頃ですが、それをかなえるまでには随分年月がかかりました。けれども私がそうだったように、あきらめなければいつか必ずかないます。

英語教育が大きく変わるということで、興味を持っている保護者の方も多いと思いますが、英語は子どもたちが成長していくうえでの1教科にすぎないということを忘れないでください。英語だけに固執するのではなく、たとえば算数好きな子どもなら、算数を究められるような環境をつくってあげる。究めようとすれば、必然的に他国の人たちとコミュニケーションを取らざるを得ませんから、英語が関係してきます。

英語にばかり集中するよりも、いま子どもが持っている良さを伸ばしてあげて、それが英語を通じてさらに良くなればいいのではないでしょうか。英語はコミュニケーションの道具にすぎません。英語を使ってより良い方向に子どもたちが伸びて行けるように、先を見越してアドバイスしてあげてほしいですね。

私には小学2年生の息子がいて、寝る前に英語の絵本の読み聞かせをしています。息子のお気に入りは世界各地のお祭りの絵本です。すぐ音を覚えて暗唱するようになりますが、英語を覚えさせるのが狙いではなく、「世界にはこんなお祭りがあるんだ」と楽しみながら違う音、違う文化に親しませるのが目的です。

こうした絵本は簡単な単語ですし、Lexileスコアなども上手に活用しながら、発音は二の次でよいので、ご家庭でも実践してみてはどうでしょうか。本を読むと、1行1行の意味でなく、段落の全体の大意をとらえられるようになります。英語は「修行」ではないので、ぜひ、楽しみながらやってみてください。何ごとも同じですが、楽しめれば長続きします。新しい文化を教えてくれる扉として、英語に親しむきっかけになるはずです。

前編を読む

関連リンク国際教養大学GC&Tウェブサイト TOEFL Primary®有識者の声公立小学校初!大仙市立東大曲小学校TOEFL Primary®実施レポート


英語教育学者 町田 智久先生

後編のインタビューから

-町田先生の現在のご活動
-子どもに求められる英語力
TOEFL Primary®の良さとは?

 

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