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Vol.044 2017.07.28

絵本作家・童話作家 正岡慧子さん

<後編>

思うと現れる
誰にも必ず訪れる人生の分かれ道
どう道を選ぶかが大切

絵本作家・童話作家

正岡 慧子 (まさおか けいこ)

1941年、広島県生まれ。経営コンサルタント秘書、外資系広告代理店勤務、飲食店経営を経て、絵本作家・童話作家に。全国の子どもからお年寄りまでの「読み聞かせ、読みあい、読み語り」運動を推進。主な作品に『きつねのたなばたさま』(絵・松永禎郎、世界文化社)、『あなぐまのクリーニングやさん』(絵・三井小夜子、PHP研究所)等。日本児童文芸家協会理事を経て現在顧問。東洋医学を学び、薬膳の普及にも尽力している。

読後に心がじんわり温かくなる数多くの物語を創作されている絵本作家・童話作家の正岡慧子さん。喫茶店経営時代のひょんな出会いから作家の道を歩まれることになりますが、そのユニークな経歴は、興味を持ったら潔く飛び込む、好奇心と行動力にあふれているからこそ。挫折もあったそうですが、穏やかな口調で「いつも本に支えられてきた」と振り返ります。これまでの道のりのほか、絵本や本の魅力などについてうかがいました。

目次

運と友人に恵まれた
「助けて」「教えて」と言える方がいい

絵本作家・童話作家 正岡 慧子さん

企業勤めから喫茶店経営、鍼灸・薬膳を学びに中国へ…といろいろな転機がありましたが、乗り越えられた理由の一つは、「運」。もう一つは「友だちに恵まれたこと」だと思います。皆、折々で声をかけてくれました。

喫茶店を開く時も、多くの人から止められました。「店をやるには、にこやかで愛想がいい人でないと。君は向かない」と(笑)。でも、ある友人にこう言われました。「口べたでも、最後にクエスチョンマークをつければ話は続く。“こんにちは”では話が途切れるけれど、“お仕事の調子はいかがですか?”と聞けば相手がしゃべってくれる」と。実際にその通りで、うまく乗り切れました。

中国から戻った時も、友だちが集まり、皆で心配してくれました。薬膳の本を出す時にサポートしてくれたり、何かの時にとタクシーチケットをくれたり……。

困っている、難しい、わからないと、私は正直に周りの人を頼り、教えてもらいました。知っている、できると、独りよがりになっていたら、こんなに友人に恵まれなかったと思います。「助けて」「教えて」と素直に言えたのがよかったのかもしれませんね。

正岡さんから子どもを取り巻く大人たちへのメッセージ

「言葉が人を動かす」ことを大人は自覚して

絵本作家・童話作家 正岡 慧子さん

私は小さい頃から本が好きで、これまでたくさんの本を読み、本の中のメッセージを自分なりに取り込んで生きてきました。苦しい時には、本で心の調整をしてきました。もちろん小説なども読みますが、意外なことに、自分を立て直す時には絵本が一番だと思います。絵本には真理を突いたメッセージがシンプルに入っていて、それが自分の迷いをストレートに気づかせてくれるからです。

ですから、私自身が絵本を創る時にも、「生きる」というところに向かいたいと思っています。「生きる」といっても、特別大それたことではありません。「やさしいってどういうこと?」とか、「友達とケンカをしたら仲直りした方がいいよね」とか、大人から見たら小さなことです。でも子どもには本当に大変なこと。そういう子どもたちの「生きる」に向かいたいのです。

そんな風に本とつきあってきた私から、子どもを取り巻く大人たちに伝えたいのは、「言葉が人を動かす」ということ。言葉一つが生死を分けることもあると思います。たとえば、いじめの言葉は痛い。言葉は時に、逃げられない鋭さとなって襲ってくることがあります。逆に、言葉によって人生が救われることも多々あります。だからこそ、大人たちには言葉の重みを自覚して、子どもたちに接してほしいと思います。

とはいえ、子どもに対して“指示”や “命令”は言葉ではなかなか伝わりません。そんな時、絵本を使ってみてはいかがでしょうか。お母さんが子どもに「がんばらないとダメでしょ」と言ってもあまり伝わらないですよね。それよりも、『大きなかぶ』を読んであげて、「すごいねえ、みんなでがんばっているね」と言う。「考えないとダメじゃないの!」と言うより、『三匹の子ぶた』を読んで「なるほど、考えているね」と一言添える。その方が子どもの心にはストンと入ります。

ただ、本は読んでいくと積み重なっていくものですが、すべて同じように積み重なるわけではありません。自分が引き受けたいことだけが積み重なっていくのです。これが読書のおもしろさです。同じ本を同じように読んでも、人によって積み重なり具合が違います。それで構わないのです。その積み重なり方が個性ですから。

正岡さんが本から得た生き方とは?

分かれ道が来たら
「キリマンジャロの豹」になって考えたい

絵本作家・童話作家 正岡 慧子さん

子どもたちには「心に思うと現れる」ということを覚えておいてほしいと思います。例えば、プロのスポーツ選手には、その夢を子どものときから心に描いていたという人が少なくありません。偉大を心に描き続けなければ、決して偉大は形になりません。自分の想いを大切に、求めるものを追い続けてください。

生きていると、どこかで必ず分かれ道がくるものです。その時にどう道を選ぶか。一つは、本当に好奇心を持って、自分で決めてほしいということ。「親が言ったから」ではなくね。

もう一つは、条件ばかりを考えるのではなく、大きく物事を捉えて進んでほしいということ。自分は「地球の一員」という気持ちで考えると、目の前で起きていることを捉え直すことができます。たとえば、いじめは学校の中で起きていることですよね。皆さんは「地球人」であって、「学校人」ではないのですから、学校という世界の中だけで判断せず、地球という世界を見て考えてください。本には普段の自分には経験できないことがたくさん出てきます。ぜひ、本から世界を学んでください。

ヘミングウェイの小説『キリマンジャロの雪』の冒頭に、キリマンジャロ山の西側の頂近くに一頭の豹の屍(しかばね)が埋まっているという場面があります。平原や森林に住んでいるはずの豹が、なぜキリマンジャロのような高い山に登ったのか? 豹には上に登りたい何かがあったに違いない。そのことに深く感銘を受けました。そこから私が得たことは、「人がどう思おうと、やりたいことはやった方がいい」ということ。この本を読んだのは高校生の時で、父の会社が倒産し、つらい時期でした。だから響いたのかもしれません。

生きていると必ず分かれ道に出会います。どちらを選ぶかでその後の人生が変わります。そのとき、自分が本当にやりたいこと、進みたい方向はどっちなのか?と、「キリマンジャロの豹」になって考える。それが本から教えてもらった私の生き方です。これまでいろいろと挫折もありましたが、それも含めて人生っておもしろいし、その人生を本が支えてくれた。やっぱり本っていいなと思います。皆さんにもそんな本との出会いがありますように。

関連リンク 正岡慧子さん 絵本作家インタビュー|mi-te(ミーテ)


絵本作家・童話作家 正岡 慧子さん  

後編のインタビューから

-正岡さんの現在のご活動
-多感な高校時代に起きた大きな転機とは?
-正岡さんが絵本作家になるまでの道のり

 

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