スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2016/03/18更新

Vol.030 劇団目覚時計 代表 稲垣美穂子さん  前編

心に響く“ことば”の力
感動共有することで
子どもの心豊かに育つ

稲垣 美穂子 (いながき みほこ)
東京都生まれ。日本女子大学文学部在学中に、日活映画『孤独の人』皇太子の恋人役でデビュー。日活で活躍後、俳優座養成所に13期生として入所、本格的女優を目指す。俳優座養成所卒業後は、フリーで映画、舞台、テレビに出演して活躍。1977年に劇団目覚時計を立ち上げ、オリジナルのファミリーミュージカルを全国各地で公演する。1986年には劇作家の内村直也氏を中心に、東急・五島昇氏、元副総理・後藤田正晴氏、ソニー創業者・井深大氏らとともに「青少年の心を育てる会」を設立。演劇を“家族のふれあいの場”と位置づけて活動を続けている。

大学時代に女優として映画デビューし、その後は自ら劇団を旗揚げして、プロデューサーとしても精力的に活動されている稲垣美穂子さん。演劇を通して子どもたちが抱える問題に向き合い、旗揚げ以来40年、親子のきずなや友情などをテーマに各地で公演を続けています。信念と行動力を持ち合わせた稲垣さんは、あのマンガ家で絵本作家のやなせたかしさんをして、「かぼそい身体に宿った強い精神で砂漠に花を咲かせるような仕事を続けていかれるだろう」と言わしめたほど。その情熱の源や演劇活動を長く続けられてきた背景をうかがいました。

子どものころは貧しい時代だったけれど
「愛」があふれていた

わたしが劇団を立ち上げたのは40年ほど前ですが、それによって何ができたかといわれると、とても困るんです。みなさんの心に何かを残して、お役に立っているのが一番大事ですが、演劇は観た方が背負って帰るもの。帰り道に一緒にきた方と感想を語り合うなどして、ご自身で「何か」を見つけてもらえたらうれしいですね。親子で観れば、それが会話の糸口にもつながると思っています。

演じるのは小さいころから好きでしたが、職業にするとは思ってもいませんでした。わたしは医師の父と看護師の母の間に、4人きょうだいの長女として原宿で生まれ、その後、父が開業することになり、町田へ引っ越しました。母が働いていたので、同居の祖母が家事を切り盛りし、わたしたちの面倒もみてくれました。とくにわたしは、おばあちゃまっ子で、一緒に映画を観たり、お琴や日本舞踊を習わせてもらったり。のちに着物に関する本(『着物しらべ』[読売新聞社])を書くことになったのも、祖母から「日本の暮らし」の中で楽しむことをたくさん教えもらったことが影響しているのかもしれません。

夏休みになると、毎日、父の診療所の廊下を磨かされました。きれいになると褒めてもらえて嬉しかったですね。家族で海に出かけるときには、父、母、祖母4人姉弟に加えた看護師さん、お手伝いさんの大家族でしたので、荷物は分担して持つのがわが家流。子どもなりにも役割や責任を与えられ、そのことに反発心を抱くより、当然のこととして受け入れていました。いま思えばしつけの一環だったのかもしれませんが、押しつけではなく自然に社会性が身についたように思います。そんな経験もあり、子どもは環境を与えればすくすくと育つと思っています。わたしが子どもだったころは、食べるのもたいへんな時代。親は子どもに食べさせるため必死に働いていた。贅沢はできなくても、家族の幸せを考えてくれていた。

そのころ、母は流行りの機械編み機を入手して、夜なべして4人に柄の入ったセーターを編んでくれた。セーターの暖かかったこと。長女の私のセーターは一番最後でしたから、うれしくてうれしくて夜中に何度も目を覚まして“ジャー”っという機械音を聞いたものです。そんな親の姿を見て、「愛情を注がれている」と、子ども心に感動したことは今もハッキリ憶えています。

4人も子どもがいると、ステキなプレゼントの記憶は浮かばないけれど、両親の愛、きょうだいの愛、叔母たちの愛……そして祖母からは生きていくために必要な、暮らしの中の“生きた知恵”をたくさんたくさん授かったように思います。

稲垣さんが日活映画デビューするまでの道のりとは?

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