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Vol.019 2015.05.08

外務省 女性参画推進室 室長
松川るいさん

<後編>

「女性が輝く世界」とは
女性男性

一人ひとり輝く世界

外務省 女性参画推進室 室長

松川るい (まつかわ るい)

外務省女性参画推進室の初代室長。東京大学法学部在学中に外務公務員Ⅰ種合格、1993年外務省入省。1997年ジョージタウン大学にて国際関係大学院修士号を取得。国際宇宙ステーション関連業務のほか、みなみまぐろ国際裁判や国家責任法、管轄権を担当。アジア太洋州局地域政策課でASEAN協力や日中韓協力、日タイ、日フィリピン他ASEAN諸国とのEPA 交渉に携わり、ジュネーブの軍縮代表部にて核軍縮に取り組む。前職は、日中韓政府が2011年にソウルに設立した日中韓三国協力事務局の初代次長。

2014年、外務省に新設された女性参画推進室。その初代室長に任命された松川るいさんは6歳と1歳の二児の母でもあります。日中韓三国協力事務局初代次長、国際宇宙ステーション関連業務やみなみまぐろ国際裁判の担当をはじめ、ASEAN諸国との経済連携協定、核軍縮交渉など、輝かしいキャリアをもつ松川さんが、「女性が輝く社会」の実現に向けて奔走する姿とその素顔に迫りました。

目次

*松川るいさんのご所属・肩書等は、インタビュー当時(2015年3月)のものです。

「自分は愛されている」という自己肯定感が私を前に進ませてくれている

外務省 女性参画推進室 室長 松川るいさん

いまはさまざまな会議でお話しするなど、人前に出る機会が多くなりました。人前で作文を読むことすら苦手で避けていた、幼いころのわたし(前編参照)からはだいぶ変わりました。もちろん、そのきっかけをつくってくれたのは、大親友の“めぐちゃん”なのですが、ふり返ってみると、もうひとつ大切なことがあると思っています。それは、「自分は愛されている」という気持ち。自己肯定感です。そして、その気持ちを育んでくれた両親の存在です。

自分が大切に思う人、自分が愛する家族とのあいだにしっかりした絆があれば、わたしは他人から何を言われても大丈夫だと思っています。そう思えるのは、たぶん、わたしが愛されて育ててもらったという実感があるからです。自分のことを絶対的に愛してくれる存在である両親がいることを知っているから、辛いことや悩むことはあっても、これまで前へ前へと進むことができたのだと思います。

だから、ふたりの子どもたちにも、「両親から愛されている」と心から感じてほしいのです。わたしの場合は仕事柄、子どもといっしょにいる時間が長いわけではないので、なるべく濃いコミュニケーションをしようと心がけています。子どもたちには、わたしがあなたたちのことを大切に思っている気持ちを明確な言葉にしていつも話しています。「ママの大切な〇〇ちゃん」「〇〇ちゃん、だ~いすき」と、もう臆面もなくベタベタの言葉をたくさん言っています。「ママはね、こう思う」と、自分が考えていることは、できるだけきちんと理由をふくめ説明もします。

わたしは、父や母が自分たち姉妹にかけてくれた言葉をいまでもとてもよく憶えていますし、それが支えになっていることが多々あります。だから、心のなかで思っているだけでなく、口に出して、言葉で伝えることはとても大切だと思うのです。

「どんなに仕事が立派でも、子どもがちゃんとしていなければ何にもならない」。これは、わたしの母がよく口にしていた言葉です。それを聞いて育ったからでしょうか。親は子どもをちゃんとした人間に育てないといけない。そういう信念がわたしのなかにあります。そうはいっても、仕事も家事も完璧にこなせるはずもなく、そうしようともぜんぜん思っていません。わたしはスーパーワーキングマザーではないので、家事も育児も、お任せできるところは専門の方にお任せするようにしています。

「仕事がこんなに忙しいのに、お子さんふたりも育ててすごいですね」と感心されることもありますが、それは、わたしだけががんばってもできることではありません。保育園や家族の協力があってこそだと思います。「男女の家庭内での固定的な役割意識と長時間労働。この2点が、日本の女性の社会進出を阻む最も根本的な障壁です」という話をよくさせていただきますが、そのとき必ず、よくない例として「うちの夫が典型例で……」と付け加えます。

というのも恥ずかしながら、うちの夫は「お皿を洗ってね」と言ったら、ほんとうに(わざと?)「お皿だけ」しか洗わないような、男子厨房に入らずの人なのです。調理器具やグラスはそのまま。このエピソードをお話ししたキャロライン・ケネディ駐日大使には、お会いするたびに「あなたの“お皿洗いハズバンド”はどうしてるの?」なんて聞かれたりするほどです(笑)。蛇足ながら、夫の名誉のために申しますと、わたしが職務復帰して1年近くたった現在は、お皿「以外も」洗うようになっています。日々、進歩しています。家政婦さんやシッターさんを毎日雇えるなら別ですが、夫が家事・育児を然るべく「分担」するようになってこそ、女性が継続して働き昇進するというのも日常的なことになると思います。

女性が活躍しやすい社会とは?

「女性が輝く社会」は、女性も男性も一人ひとりが輝く社会でもあるのです

外務省 女性参画推進室 室長 松川るいさん

変わりつつあることを期待しますが、「専業主婦vsワーキングマザー」という論調は、「なぜ、こんな構図でしか考えられないのだろう」といつも考えてしまいます。女性の平均寿命が86.6歳なのに、「自分の生き方はこれしかない」と決めつける必要はぜんぜんないと思うのです。

バリバリ働く時期があってもいい、子育てに集中するときがあってもいい、NPOなどで社会貢献活動に携わったり、子どもが成人してからご自身が学校に通うのもいい。長い人生ではいろいろなことができると思います。一生のなかには、いくつものライフステージがあって、いろんな自分がいる。その可能性を議論すれば、もっと楽しく、たくさんのことに取り組めるのではと思います。

そして、それは別に女性に限ったことではなく、男性も、仕事だけではなく、いろんな生きがいをもてばよいと思います。男性が午後5時以降の生涯を大切にするようになってはじめて、日本の「働き方」がより良い方向に変わると思うのです。

望めば、仕事をして、昇進もできて、子どもも2人3人と産んで安心して育てることができる。そしてそれを、ふつうの女性が、ふつうにがんばったら実現できるような社会。それは男性にとっても絶対に喜ばしいことです。

なぜなら、それが実現できたときには、長時間労働は解消され、生産性の高い効率の良い働き方ができ、各人が私生活も十分楽しむ時間的余裕がある社会になっているからです。女性が活躍しやすい社会は、女性だけでなく男性、子ども、高齢者にとっても良い社会です。いろいろな事情を抱える多様な人たちが輝ける社会です。男性と女性とが協力して「女性が輝く社会」を実現し、一人ひとりが輝いて生きていけるような社会をつくるため少しでも役にたつことができればと強く思います。

子どもたちへ伝えたいメッセージとは?

一生懸命取り組んだものはあとから、すべて「つながる」

外務省 女性参画推進室 室長 松川るいさん

わたしの現在の仕事は、国家の垣根を越え、「世界の女性たちが経済的にも精神的にもさらに自立した生活を送れるようになる。その実現のためにはどうしたらいいか?」を考え、実践に移すことです。直近の課題としては、昨年(2014)につづき、『WAW! Tokyo 2015 女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(World Assembly for Women in Tokyo)』を成功させることです。

WAW!は、日本の女性の直面する問題だけではなく、世界の女性たちが直目するさまざまな問題について、解決のための知恵を絞る会議です。世界には、「女性だから」という理由だけで教育を受けられなかったり、経済的自立が阻まれたり、紛争下で特に被害を受けたりすることが多々あります。

WAW!の前後にはシャイン・ウィークスという、だれもが参加できる企画もあります(下記関連リンクをご参照ください)。この会議をぜひ毎年継続して開催し、いま日本に起きている女性活躍促進のムーブメントをさらにあと押しするとともに、世界の女性をエンパワーしたい。そして、何よりも、人脈と情報が集まる日本外交上の財産にしたいと考えています。WAW!は、ムーブメントであり、国際ネットワークであり、世界に日本を発信するための舞台でもあるのです。

WAW!の活動もそうですが、人の縁とは素晴らしいものです。人と人とのつながりによって、とても大きな活動になることを実感しました。ネットワーキングに長けていないわたしだからこそ、「この人のことをもっと知りたい」と思ったら、素直につながるように心がけています。また、出会った人と人をつなぐことの大切さもわかりました。肩書とか年齢とか関係なく、いいなと思った“機”や“ご縁”を逃さないように、つながりを創っていきたいと思います。

「外務省」とひとくくりにしていいのだろうかと思うほど、外務省にはさまざまな仕事があります。わたしがこれまで担当してきた仕事も、そのほんの一部でしかありません。正直に言えば、興味がなかった仕事や部門もありました。しかし、いったん取り組んでみると、必ずおもしろくなったり、楽しくなったりしました。これは人生にも通ずることなのかな、とも思います。出会いやタイミングで人生が大きく動くこともあります。先入観をもたず、何事にも真摯に向き合い、一生懸命とことんやりぬくことが大事なのではないでしょうか。

そんなわたしの拙い経験からですが、子どもたちへのメッセージがあります。

たとえば、とくに蝶に興味があるわけではないのだけれど、とりあえず学校の課題で蝶を捕まえ観察を行っているとします。「もっと違うことをしたほうがいいのかな?」と迷うときもあると思います。でも、蝶の生態を調べていくうちに、ほかの分野や科学全般に興味が移るかもしれない。蝶を追いかけているうちに、走るのが得意になり、もしかしたらアスリートに目覚めるかもしれない。ひとつのことに打ち込んでいるなかで、別の道が「見えてくる」ことはおおいにあると思います。

「この道に進もう」と決められることは素晴らしいことだと思いますが、迷いながらでも、いろいろなことに一生懸命取り組むことも同じくらい大切だと思います。いますぐに「コレ!」と決めなくても、いろんなことに取り組むことで、たくさんの知識やスキルが身につき、そのぜんぶがあとからつながっていき、新たな道を拓いてくれます。

いまは、何の階段を何段上っているのかぜんぜんわからなくても、ともかく無心で上っていくと、あるとき自分の眼下に“景色”が見えてくるのです。だから、何でもかんでも、とにかく手当たりしだいにチャレンジしてもらいたい。娘たちにもよく言っているんですよ、「日本に生まれてよかったね。がんばったら、ほんとうに何にでもなれるんだよ」って。


外務省 女性参画推進室 室長 松川るいさん   

前編のインタビューから

– 本を読んで空想しているほうが楽しかった幼少期
– 小さいころに読んだ中で松川さんがいちばん印象深い一冊とは?
– 大学1年のときの「ベルリンの壁崩壊」が、その後の道を示した

 
 

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