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Vol.017 2015.01.16

リバネスCEO 丸幸弘さん

<後編>

興味があることはまずやってみる
早くやってみる、突きつめてやってみる
そのプロセスで夢は必ず現れてくる

株式会社リバネス代表取締役CEO

丸 幸弘 (まる ゆきひろ)

1978年神奈川県生まれ。東京薬科大学生命科学部卒業、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。2002年に大学院生15人でリバネスを設立、日本で初めて民間企業による先端科学の出前実験教室をスタート。理科教育に力を入れるとともに、地球規模の課題を解決することを目標に、現在までに30社以上のベンチャー企業立ち上げに携わるイノベーターとしても活躍。東京大学発のベンチャーとしては初めて東証一部に上場した株式会社ユーグレナの技術顧問も務める。

中学高校時代は「ヤンキーで、バスケとバイクにはまり、勉強はまったくしませんでした」と笑う丸さん。いまは、小中高生向けの理科教育から最先端科学技術研究まで、幅広い事業分野をもつ株式会社リバネスの代表です。これまでの道のりや夢との向き合い方についてうかがいました。

目次

学問へと導かれたのは、人の「本当の姿」にふれた感動から

リバネスCEO 丸幸弘さん

中学高校と勉強はまったくした記憶がありません。高校になると、成績は学年でビリから3番目、模試での偏差値は30台でした。数学はとくに苦手で、定期試験はいつも0点。授業中は自然といつも寝ていたのですが、あるとき数学の先生に呼び出されたんです。「おれの授業がきらいなのも、数学がきらいなのもいい。でも、おれは別にお前がきらいじゃない。ただ、お前に見せたいものがあるから、こんどの週末、ここに来い」。そう言って、1枚のチケットを手渡してくれました。

何だろうと首を傾げつつ行ってみると、その先生の絵の個展だったんです。先生は「おれは昔、画家になりたかった。もちろん教師も好きでやっているが、いまでも画家になる夢はなくしてなくて、こうして絵を描くことはやめられない。夢をもつのは面白い。やるべきことも、やりたいことも両方やればいいんだ」。ポツポツとそう話してくれました。先生がいつもの先生とは違う「本当の姿」を見せてくれた瞬間から、ぼくはその先生を尊敬しました。それまでやろうと思わなかった受験勉強も数学も、ちゃんとやろうと思うきっかけになる出来事でしたね。

ただ、そう思うようになっても学力はどん底で、大学に対する憧れや「これを学びたい!」という目標もなかった。それで、就職が有利らしいという理由だけで理系の大学を受けることにしたんです。10校くらい受験して、結果は全滅。どこかには受かると思っていたので、世の中そんなに甘くない、とショックを受けました。もちろん、いまふり返れば、あたり前の結果ですが。

そのあとは浪人生活ですが、ここでも大きな転機がありました。予備校の発生生物学の授業のときのことです。精子が…卵子が…受精して…細胞分裂して…やがて人間の身体ができあがる…というプロセスの説明をした最後に、先生がチョークを置いて。「これ、わかっていることみたいに教科書に書いてあって、わたしもそう話しているけれど、本当はなぜこうなるのかは、ほとんどわかっていないんだ」と言ったんです。エッ!と驚きました。

そのとき初めてぼくは、「世の中、本当はわかっていないことが多い」という事実を知った。これはとても大きな転機でした。それ以来、生命科学や自然科学の世界にとても惹かれるようになりました。そして、日本で初めて生命科学部を創設した東京薬科大学に憧れ、受験して無事合格。そこで出会った先生方にも「学問」に対する興味をますます刺激され、大学院は東京大学に進むことになりました。

リバネスがスタートした場所とは?

まず「理科離れ」をストップするため、自分たちにできることからやる

リバネスCEO 丸幸弘さん

東大の大学院に入ると、ふたつの現実を突きつけられました。自分はこんなに自然科学が大好きなのに、世間では「理科離れ」が危惧され、さらに「ポスドク問題」(博士号取得者の就職難問題)がちょうど起こっていたんです。「理科離れ」「ポスドク問題」、表面的には異なる事象のようにも思えますが、どちらも「研究」という根っこでつながっているように思えました。

「研究」は、新しい産業を起こすために国家としても不可欠なことで、税金もたくさん使っている。なのに、研究者が研究者として働けずにアウトプットも出せない。加えて「理科離れ」で、将来は研究者が激減するかもしれない…。こういう状況というのは、すごく危ういと感じました。

まず理科離れを解決しなくてはいけない。この課題に取り組もうと、大学院生の仲間15人が集まりました。そうして立ち上げたベンチャー企業がリバネスです。その最初の仕事でありビジネスモデルが、理科離れを解決するために、小中高の学校に「科学実験教室」の出前授業をして、最先端科学の面白さを伝えることでした。

リバネスの立ち上げ当初は出前授業だけだったので、企業といっても事務所を毎日使うわけではなく、全員が集まる日曜日だけ会議をする場所が必要だったんです。どこか安く借りられないか…。すると、お母さんが公文式教室を開いているという仲間がひとりいたんです。その公文の教室の先生に自分たちの想いを伝え、日曜日だけ教室を借りられないかとお願いしたところ、快諾してくださいました。

その公文の先生にはたいへんお世話になり、採点のアルバイトをしつつ、子どもたちへの接し方も教えていただきました。平日は大学院で学んだり、出前授業に行ったり。そして、日曜日はオフィスがわりの公文の教室で会議。そんな創業期でした。じつは、リバネスとして初めて出前授業で科学実験教室をしたのも、その教室に通う生徒さんたちでした。そのときの内容は、ぼくと現副社長の池上が得意な「光合成のふしぎ」でした。2001年12月のことです。それはすごく思い出深くて、いまでも鮮明に憶えています。

丸さんが考える「夢のもち方」、そして丸さん自身の「いまの夢」とは?

興味関心をもって突き進めば道は拓く

リバネスCEO 丸幸弘さん

2001年の創業から十数年がたち、リバネスはこれまで約30のベンチャー企業を立ち上げたり支援したり、200以上のプロジェクトにも取り組んでいます。海外にも進出して、どんどん新しいことに挑戦できるようになりました。

偏差値30台だったぼくでもそれができる。だから、講演のご依頼をいだだいて学生たちに話すときなどにも、「偏差値なんかにビビるな」と言っています。大切なのは「やってみたい」と思ったことは、少しでも早く、とにかく早く、実際にやってみること。それを、いつも強調しています。

いまはインターネットが発達し、情報だけなら小学生でも大人と変わらないものが手に入る。だけど、その情報は実際に使ってみて、初めて活きてくる。もてる情報を実際に使ってみる、自分が傷つきながらやってみることで、情報は「知識」となって身につくのだと思います。「知識の実装」とぼくは言っています。

よく「夢をもて」と言われますよね。もちろん夢がある人はそれでいいけど、夢は「もて」と言われてもてるものでもない。でも、誰でも興味や関心があることは絶対にあるはずです。だから、興味があることはまずやってみる。早くやってみる。突きつめてやってみる。そのプロセスで、夢は必ず現れてくるものだと思います。

このインタビューの冒頭(前編)でもお話した、ぼくが技術顧問を務めるユーグレナというバイオテクノロジー企業は2005年の創業ですが、現在の時価総額は1200億円という規模にまで成長しています。その一翼を担えたぼく自身は、ビジネスが得意というわけではなく、世の中の、それも地球規模の課題を解決したいという気持ちを、「誰もしたことのない形」「誰も損しない形」で実現しようとしてきただけです。お金儲けには興味がないのですが、結果的にお金になっている。

だから、これから実現したいと考えていることのひとつは、成績も優秀じゃない、凡人の自分が、まさに自分の興味関心に向かって進んできた道のり、その知識、学んできたスタイルというのをつぎの若い世代、研究者に伝えていきたい。そうすれば、ぼくより優秀な人はたくさんいますから、課題解決のパワーはもっと大きく活発になると思うんです。

自分としてのゴールはやはり、「科学技術の発展と地球貢献を実現する」という、課題や問題解決に貢献するリバネスのビジョンと同じ。生きているうちに、ユーグレナのようなベンチャー企業をあと10社は作りたいと思っています。人の命には限りがあります。しかし、やろうと思えば、そして実践すれば、たくさんのことができると思います。ですから、それくらい大きなことを目指してもいいですよね。

関連リンク
株式会社リバネス


リバネスCEO 丸幸弘さん  

前編のインタビューから

– リバネスという会社のオモシロサ、フシギさとは?
– 丸さんが肌で感じたシンガポールと日本の学校の違い
– 中学高校時代は「ヤンキー」だったという丸さんのオモシロエピソード

 

 

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